「只今、帰られました」

 どれぐらい時間が経ったのだろう。とても長い静寂を破ったのは外から聞こえた、露さんの声だった。

「わかった。ありがとう」

 皇子が戻ってくる気配はまだない。きっと家臣達と話し合っているのだろう。

 いけないことだとわかりながら、私はそっと部屋を抜け出すと忍び足で廊下を歩く。すると、突き当たりの部屋から声が聞こえた。

「赤兄殿の話しは誠にございます」

 太く低いこの声は、大岩さんだ。