考えていたら、あまり眠れないうちに朝を迎えた。今日も朝餉を食べて温泉に入り、部屋でまったりする。これは皇子の侍女だから。昨日の時雨さんの言葉を思い出す。

 やっぱり凄い人なんだな。と、感心する。そんな皇子は、私に背を向けお昼寝中だ。

 その姿を見ていると、その身分を忘れてしまいそうになる。

 私は皇子の近くにそっと座ると、起こさないように漆黒の髪に触れる。しみじみ、奇跡だって思いながら。

 飛鳥時代の人の髪を、触ったことがあるなんて私ぐらいしかいないだろう。この時代はシャンプーもリンスもないのに、髪の毛は艶々で張りがある。と、観察していたら突然漆黒の瞳に見つめられる。

 思わず手を引っ込めたけれど遅かった。既に、皇子は私の手を握っている。