火照った頬に冷たい風が吹く。
 若干、のぼせ気味だったから丁度良い。

「……優花殿」

 小さく、皇子が私の名前を呼ぶ。

 だけど動けないのは、右肩に温かな重さを感じたから。

 心臓がドキリと跳ね上がる。首筋に触れる皇子の髪の毛が擽ったい。

「……皇子?」

 何も答えない皇子が、今何を思い何に悩んでいるのかわからない。いや。聞いたところで私ごときが、理解できるようなことじゃないのかもしれない。だけど私は、忘れないで欲しかった。