「皇子が病にかかったフリをするのって……」

 私が首を突っ込んではいけない問題だとわかっているのに、皇子のことをもっと知りたいという気持ちがこの口を勝手に動かす。

「……王位継承に巻き込まれないため?」

「……え」

 型の良い唇が小さく開いては、すぐに閉じてしまう。しかしその変わりに、細い顎が上下に微かに動いた。

「……中大兄皇子は、恐ろしい男でな」

 歴史に疎い私ですら知っているその名前。しかし、皇子とどのような関係があるのだろうか。考えていると、察したのか皇子が小さく笑う。