「そうだ」

 背を向けた五月雨さんがもう一度、平伏そうとするからまた腕を掴む。だから、いちいちしゃがまなくていいのに。

「ど、どうかされたのですか?」

「皇子のことなんだけど」

「アリマノ皇子様のことでございますか?」

「うん。いつから、患ってるの?」

 虚ろな目。間延びした話し方。あれはいつからなのだろう。

 その瞬間、顔を曇らせた五月雨さんがゆっくりと口を開く。