【短】自殺志願者に棒付きキャンディ



「いまになって、もっと頑張ればよかったって。気持ちだけでも伝えたらよかったって。親友と付き合ったって聞いたあとじゃ、もう言えないじゃん……」



親友のことも大好きだもん。

高校生になってから知り合ったけど、もう心を許せる大切な友達。

本当に素敵ないい子だから、わたしが男子なら付き合いたいって思った。

それくらい素敵な友達。



「大好きな人と大好きな親友が付き合ったって、正直喜べないんだよ。そんな自分が嫌すぎて、醜くて、いちばんむかつく」



報告を受けたのはついさっきの昼休み。

「おめでとう」って言うと、「ありがとう」っていままでされたことないのに、初めて頭を撫でられた。

それが余計に虚しくて悲しくて、気がついたら授業に出ずにここにいた。

大好きな人達の幸せを喜べない自分が、幸せになれるわけがなかった。

全て、自業自得。

だから死にたくなった。

けど、覚悟なんて決まらなかった。

結局、告白する勇気も、死ぬ勇気もない中途半端な人間だったんだ。

自己嫌悪だけが膨らんで、ない覚悟を必死に考えていただけ。



「そうなんですね」

「うん。ごめんね、こんな話。これ、聞いてくれたお礼」



ブレザーのポケットから棒付きキャンディを出す。

昔から好きで、食べたくなったときにすぐ食べれるようポケットに常備している。



「わたしはできなかったけどさ、大吾くんは後悔ないようにね」



手を伸ばして棒付きキャンディを受け取った大吾くんは、両手で大切そうに持つ。

俯いているから顔は見えない。

ちょっとお説教っぽかったかな?

先輩風吹かしたイタいやつかも。