「幼なじみで生まれたときからずっと一緒で……って、こんなの聞いても、だよね」
「そんなことないです。よかったら、そのまま話してください!」
大きな声に隣を見れば、前のめりになってわたしに近づいてきていた。
その姿を見て、思わず吹き出した。
これもまた巡り合わせ。
話してもいいのなら、聞いてもらうのもいいかもしれない。
というより、ひとりで抱えるには正直しんどいからここに来た。
わたしは、自分の価値をたしかめたいんだ。
「ありがとう」
「はい。じゃあ、どうぞ!」
どうぞ、と言われたたらなんか話しづらい。
でも、しっかりと話を聞こうとしてくれる姿勢が、すごく心強いって思った。
「その幼なじみは恋愛なんて興味ナシって感じだったんだよ。けっこう頑張ってアピールしたつもりだったけど、わたしの気持ちになんて少しも気づかない」
小学生の頃は怖いもの知らずで、自然を駆けまわっていた。
わたしも置いて行かれなくて、必死についていった。
虫も高いところも苦手だったけど、小学生ながらに彼と離れることのほうが怖かったんだと思う。
だから苦手とか言っている場合ではなかった。
中学生になると、部活ばっかりになったけど、それでも理由をつけて一緒にいた。
誰よりも近くにいる存在でありたかった。
それは、高校生になっても同じだったのに。
「必死で追いかけてたのに、彼はわたしの親友と付き合った。一目惚れだったって」
「うわ……」
思わず声が出たという感じの大吾くん。
そうだよね。
好きな人と親友が付き合うって、ドラマとかでよく見るドロドロのテンプレ。
でも、リアルでもあるんだよ。
だからテンプレなんだなって、ふたりが付き合った報告を受けたときに身にしみて感じた。



