「えっと、ですね……好きな人、にその……好きな人がいると気づいてしまったという感じで……」
「そうなんだ。でも、まだ好きな人がいるってだけでしょ?」
「まぁ……」
「じゃあ、まだ頑張れるよ。……って、すごくつらかったから、飛び降りようとしてたんだよね。そんな大吾くんにかける言葉じゃないや……」
「先輩?」
膝を曲げて抱えるようにする。曲げた膝に顔を埋めて、ぐっと涙をこらえる。
「ごめん、八つ当たりした」
「いや、気にしてないですよ」
そんなわけないよ。
好きな人に好きな人がいると知っただけで、絶望して飛び降りようとしているんだから。
わたしが先に柵を乗り越えていたことに近づいてても気づかないくらい、周りが見えない状態だった。
それくらい影響力のすごい好きで好きでたまらない人。
そんな人が、自分ではない他の人が好きとか、受け入れられるわけがない。
「先輩はどうして……?」
「わたしも失恋。好きな人に彼女ができたんだ」
だから大吾くんの気持ちはよくわかる。
本当に好きだからこそ、自分へ気持ちが向いていないと、辛くて苦しくて悔しい。
恋って本当に厄介。
失恋したら死にたくなる。
それほどに、打ちのめされてしまう感情。



