「君はさ」
「あ、山科大吾っす。俺の名前。大吾って呼んでください」
「山科大吾くん。かっこいい名前だね」
「あざっす」
わたしの隣に、わたしと同じ態勢で座る大吾くん。
少し照れたようにお礼を言う大吾くんは、体育会系っぽい。
そして、すでに明るい。
「わたしは橋田綾。二年生」
……あれ?
そういえば、彼はわたしとひとつしか変わらないって言ってたな。
入学式で見かけたりでもしたのかな?
「綾先輩。先輩に合う素敵な名前っすね」
無邪気な笑顔。
さっきまで虚ろな瞳をして、覇気がなかった人とは思えない。
そんな彼が、なぜこんなところにいるのか不思議でたまらない。
「大吾くんはさ、どうしてここに?その……自殺しようとしたんだよね?」
言葉を選ぼうとしても思いつかなかったから、直球で聞いてしまった。
こんなセンシティブな質問は、ほんの数分前に命を絶とうとしていた人に聞くべきじゃないとわかっている。
でもいま、同じ状況で出会ったからこそ、話を聞いてあげることはできるかもしれないと思った。
心が折れていたわたしなんかがその役目をしようとするのはおかしな話だけど。
まだわたしは、誰かの話を聞きたいと思うくらいには、覚悟が決まっていなかったみたいだ。



