「はぁ……」
深く息を吐きだす。
何やってるんだろう。
息を吐いて吸ったあとに、思わず吹き出してしまった。
そのあと、笑いが込み上げて抑えられなくなる。
「……ふっ。あはははっ」
「え?どうしました?」
彼も疲れていたのか、脱力してしゃがみ込んでいた。
けど、わたしの笑い声に不思議に思ったようで、顔を上げて尋ねてきた。
その顔は、さっきみたいな虚ろの瞳はしておらず、目に光があった。
「いや、おかしいね?ふたりとも死にそうになってたのに、相手を説得しようと必死になるなんてさ」
「……たしかに、そうですね。はははっ」
同意すると、声を出して笑ってくれた。
思いつめてるのかと思っていたけど、そうではないみたいで安心する。
本当に自殺しようとしていたのなら、こんなにすぐに笑えないから。
まず説得に応じてもくれなかったと思う。
自分も同じ立場だったのに、それを棚に上げて胸を撫で下ろした。
「なんか、バカらしくなって気が抜けちゃったよ」
「俺もっす」
コンクリートにお尻をつけて座り、両足を前に伸ばす。
見上げれば、今死ぬにはもったいないくらいの澄んだ綺麗な青空が広がっていた。



