「折れるな少年。負けるな」
「あ……」
もしここで、本当に自殺しようとしているのならやめさせないと。
もう、わたしの覚悟とかはどうでもいい。
驚いたような顔をする彼に一歩近づく。
少し踏み外せば下に落ちるとかも、いまは気にならない。
「制服綺麗だし一年生でしょ?まだまだ若いんだから、こんなことして人生を無駄にしたらだめだよ!」
「ブーメランですよ⁉先輩も俺とひとつしか変わらないじゃないですか。何があったか知りませんけど、飛び降りなんてよくないですよ‼」
「それもブーメランだよ⁉君は飛び降りるためにここにいるんでしょ⁉」
「もうやめました!でも、先輩が飛び降りるって言うなら俺も飛び降ります!今ふたりで飛び降りたら心中って言われちゃいますけど、いいですか⁉」
「それは良くないね?わたしの動機と君の動機がごっちゃにされたら、君は迷惑だよね⁉」
「先輩に飛び降りられるほうが迷惑です‼なので、一緒に戻りましょう‼」
「わかった。一緒に戻ろう!」
彼と一緒に、もう一度ちゃっちい柵を飛び越える。
内側に戻ると、いっきに疲労感に襲われてその場に座り込んだ。
思いもよらない出会いに、ふたりともパニックに陥ってたと思う。
自殺しようと(わたしの場合は覚悟が決まればだけど)屋上へ来たら、同じように自殺しようとする人に会うだなんて……。
けっこうな衝撃だった。きっとお互いに。
そのせいで無駄に大きな声で言い合ってしまった。
でも、おかげでふたりとも、今ここにいる。



