悲しき片思い アンジーとミック

「えー、もしかして美也子さん、好きな人とかいるんですか?」
「うん、いる。好きな人。怒涛の片思いなの」
「え、誰ですか?誰ですか?」
「小峰君の知らない人。高校の後輩でさ、お正月に地元で偶然会って、久しぶりに話して、恋してしまった」
「へー、じゃあ前から知ってる人だったんだ。でも今になって恋しちゃったんだ」
「うん、送ってもらったときにね、車に乗ったら、その人のカーステレオからこの世で一番好きな曲が流れてきたの。だから」
「え、それが理由?」
「うん、それだけで充分じゃない?」
「ふーん、そうかなあ」
「その曲がその人の人となりのすべてを象徴してたのよ」
「ほー、なるほどねー」
「美也子さんの気持ちは知ってるんですか?」
「そうねー、まあわかっていると思う」
「で、それで向こうは?」
「恋愛感情はもてないと」
「そっか、つらいっすね」
「でもね、感謝の気持ちでいっぱいなの。ほんと、強がりじゃなくてね。私ね、その人に会うまでは、もう一生恋愛なんて無縁で生きていくんだと思ってたの。バツイチで子持ちで、どうせオバサンだし、なんて思ってさ。でもその人は私にちゃんと女性として接してくれたのね。
だから、どうせオバサンだなんて思うのやめようと思ったの。まだまだ恋もできるし女として生きられれるって信じられるようになったの」
「そうですよ、美也子さん、まだまだいける。俺もそう思う」
「ありがと」