「どうした?その顔。なんかあった?」
「昨日、カレシと別れてきました」
「・・・・そうか・・・」
「ごめんなさい。寝てなくて、こんな顔で」
「しょうがないよ。大丈夫?」
「はい、もう、ずっとダメだって思ってたし。ケータイへし折られて、車も壊されて・・・サイアクです」
「あの、こんな言い方で悪いけど、前から暴力ふるう人だったわけでしょ。こうなってよかったんだと思う。えりちゃんのために」
「はい、頭では理解してるんです。別れてよかったんだって。でも、寂しくて、あんな人だったのに、私がいなくて大丈夫かなって思ったり、なんなのかな、自分から別れたのに」
「人って矛盾のかたまりだからさ。気持ちが揺れるのもあたりまえ。いろんな思いがわけわかんなくごちゃごちゃに入り乱れるのもあたりまえ。今日は在庫整理しててよ。接客キツイじゃん。ずっと泣いてていいよ。気にしないから」
「すいません。ホント。いつかこのモヤモヤってどうにかなるのかな」
「あのね、なるんだよ。ウソみたいに。本当だよ。私もね、離婚してるじゃん。元ダンナは人格障害者で、犯罪重ねて何度も警察に拘留されて、子ども二人抱えて離婚して、自分も子どもも精神科のお世話になるような状態でさ。でもさ、今こんなに元気にしてるじゃん。そりゃえりちゃんと私は違う人間だから、なにもかも同じってわけじゃないけど、でも信じて。絶対どうにかなるんだよ」
「そう、ですかね」
「私ね、今では神様が別れさせてくれたんだって思う。私も我慢強い女でさ、なにがあってもなかなか別れるのに踏み切れなくて、だって今まであったもの失うのって不安だし。でも今はほんとによかったって思ってる」