「ちゃんと割り切ってるんですね」
「ここまでくるの、けっこう長かったけどねぇ。うん、今は、ホントにいい思い出だよ。感謝してる」
「感謝できるってスゴイな」
「そりゃあね、泣いたのはいっぱい泣いた。でもね、私3年前に離婚して、もうこの先恋愛なんて無縁で生きてくもんだと思ってたのね。それが、こんな切ない思いをできるなんて夢にも思わなかったし。それにね、服とかアクセサリーとか買うのすごく楽しくなったの。去年の夏はさ、ユニクロのTシャツとユニクロのGパンしか着なかったんだよ。安くて丈夫で自転車こぎやすいやつ。でもさ、たとえもう二人で会ったりすることがなくても、なんていうか女の人としきれいにしたいっていう願望がふつふつと沸いてきて、女って身なりをきれいにしようとするだけで生き生きしてくるんだなぁって、そんな簡単なことも忘れてた」
「恋愛って大事なんだ。生きていくのに」
「そう、つらいこともあるけど、雨がふらなきゃ虹は見られない」
「雨がふらなきゃ、虹は見られない・・・」
「夜渡くんも、雨が止んだら虹が見られるってことだよ」
「そうか、そうですね」
「なんかさぁ、私よく若いコに相談持ちかけられるなぁ、最近」
「だって、なんか話きいてくれそうだから」
「たまには口説かれたいよな。相談ばっかりじゃなくて」
「そのうちありますよ」
「はい、みなさんそうおっしゃってくださいます。そのうちありますよって。はい、気長にまちましょう」