「昨日、大丈夫でしたか?」
「え?なにが?」
「ずっと業務一緒だったじゃないですか。普通に話せました?」
「うん、久しぶりにまっすぐ正面から顔見て話したよ。目を見て笑って話せたよ。なれなれしくずーずーしくCD貸してよーって言えたよ。心の中でガッツポーズ!」
「そうか、よかったですね」
「半年かかったなぁ、ここまでくるのに」
「長かったんですね。つらい時期が。俺全然気づかなかったけど」
「そりゃー、誰にも気づかれないようにしてたもん」
「えらいなぁ。やっぱ、そこらへんの若い子とは違いますね。けっこうぐじゃぐじゃになっちゃう子いるもんなぁ。仕事に私情はさみまくりだったりさ」
「そうねぇ、でもそれもわかるよ。つらくてつらくて、相手を攻撃することでしか自分を保てなくなっちゃう気持ち。女って幸せなときには誰にも内緒にできるけど、つらくなると誰かに言っちゃったりするしね。周りが気つかっちゃうようなオーラだしちゃったり。でもこの歳でそれやったらかっこ悪い。私は絶対やらないな」
「うん、そのほうがかっこいい」
「それにね、つらかったけど、やっぱり成長できたよね。ほら、向こうはバリバリ仕事できる人だからさ、がんばって仕事で認められるようになりたいって思ったし、積極的に学んでいこうとも思ったし」
「うわー、なんかすっげーな。ウルトラスーパー前向き」
「うん、転んでもタダでは起きないからね。絶対転んだ先でなんかつかんでから起き上がるからね。あー転んでよかったって後で必ず思うもん」
「そうですね。みちに100円落ちてることあるもんなぁ」
「やすっ」