甘い体温


それに瞳だけじゃない


果歩のもつ独特の雰囲気が、俺の中の何かをざわつきたてた


不思議なもので、瞳は自分の心をそのまま映し出す


幸せに満ち溢れていたり、悩みを抱えて苦しんでいたり、その人が今どんな状況なのかはその人の目を見れば自然に伝わってくる


今どんな気持ちでいるか、そういうものは大体その人の瞳から読み取れる


俺は仕事上、果歩みたいな目をした人達を今まで数えきれないほど見てきた


主に俺の仕事の内容は


内科と心療内科


一般の体の治療のケアはもちろんの事、なんらかの事情で心にキズを持った人達のカウンセリングをすることも俺の大事な仕事の一つだった


だからなんとなくその時に感じた


果歩の心の奥底に秘める、深い闇のようなものを……


だからと言って今までいろんな悩みを抱えてきた人を目の当たりにしてきた俺にとって、そんなに動揺するようなことでもない


毎日診る患者の一人にすぎないはず



それなのに……




『昨日から熱があって…』


『…そうですか、見た感じちょっと扁桃腺の辺りが腫れてるかもしれませんね、少し喉の辺りを確認させてもらいますよ』


そう言って、俺は少しためらいつつも彼女の喉の辺りに手を触れた


まただ


彼女に触れた瞬間、また自分でも驚くほど、鼓動が波打つのを感じた


近くで見る彼女の顔


少し伏せ目がちの表情がすごく色っぽくて、魅力的で……


とても高校生とは思えないほどだった