甘い体温


『はい…』


私は通話のボタンを押すと、天井を見上げた


『あ〜三月?俺だけど?』


通話口から聞きなれない陽気な声が聞えてくる


『ん…誰?』


聞き覚えのない声に首を傾げつつ、私はそっけなく答えた


『誰って俺だよ俺!拓也だよ
ひで〜なぁ…この前会ったのに忘れちまったのかよ』


……たくや?


そんな名前の知り合いいたっけ?


ん~…ま、いいか


『あ〜拓也ね…何?』


そーいや、そんな奴いたかもね


先月ぐらいに一度会ったような、会ってないような?


『お前、今週の土曜の夜暇?暇なら飯でも食いに行かねえ?』


『今週の土曜?……別にいいけど?』


暇つぶしには丁度いいか


『まじ!じゃあ時間は……』




ヒョイ!!



え?何か音が急に聞こえな……ん!?


卓也の言葉が途中で聞えなくなったと思ったら


突然私の手から携帯が、するりと奪い取られていた