甘い体温


『美味しい…』


初めて食べる味が意外にもおいしくて、思わず声を漏らした私


『それは良かった』


そんな私を見て満足そうに笑った陽生



あ…



ていうか何でこんな奴の前で素直に感想なんか言っちゃってんの?


でもそう思った時にはすでに遅く、隣の陽生を見るとやたらと嬉しそうな顔をしていた


『それ、俺の特製だから』


『え、これあんたが作ったの?』


そういえば確か、ここには冷蔵庫とキッチンも設備されてあったっけ?


『…わざわざこれ作ってくれたの?』


わざわざ作らなくたって、電話一本でご飯なんかすぐに運んで来てくれるのに…



それなのに



私なんかのために?



そんな面倒な事……



だけど…



どれぐらい振りだろう



こんな風に誰かに作って貰って食べるのって



そう思ったら、何故だか不意に何とも言えない複雑な気持ちに襲われた