『は?何って…お前…お粥はお粥だけど?』
『なに、食べれんのこれ?』
なんかどろどろしてるし、不気味なんだけど……
私はまた顔を歪めた
『は?』
『何よ?』
『お前、お粥を知らねーの?』
陽生は呆気にとられた様子で目をパチクリさせる
『だから何って聞いてるじゃない!』
『…まじかよ…果歩お前、お粥を知らないって、一体どんな食生活を今まで送ってきたんだよ!』
『えっ?』
どんなって…
『別に普通だけど』
ていうか何その言い方
知らないもんは知らないんだからしょうがないでしょ!
なんか
『ムカツク…』
『はぁ…本当に知らないのかよ…
お粥って言うのは風邪ひいて、食欲が無いときに食べたりするものなの
消化器官とかにも負担をかけにくいから体が弱ってる時には最適な食べ物なんだよ
今の果歩みたいな時にな』
陽生はため息まじりに話しながらもちゃんと説明してくれた
『そう、なんだ…』
そんなに驚かれる様な事なんだろうか?
知らないのは私ぐらいのなものなのかな?
『そう。子供の頃とかお母さんに作ってもらったりしなかった?』
『え?』
……子供のころ?
子供の頃って……
「触らないでよ果歩!あんたの風邪が移るでしょ!!」
『……』
不意にあの女の言葉が頭をよぎり、胸が苦しくなった
『…別にない』
私は俯いてベッドのシーツを握り締める
私にはそんな記憶一つもない



