甘い体温


『思い出した?』


私の表情を見た陽生が首を傾ける


『……』


倒れる前の記憶を思い出した私は、ポツリと呟く



『まさかあんたが…あの病院の医者だったなんて…』




そう


あの病院は前にも一度行った事があった


確かあれは1年ぐらい前?


今みたいに熱を出して風邪を引いた時だった


私の家の近くには、病院があるのは2箇所


そのうちの一つは大きい総合病院で、もう一つはどこにでもある個人が経営する小さめのクリニック


総合病院とか大きな病院はかなりの時間を待たされるし、人がやたら混雑するからあまり好きじゃない私は、あえてもう一つのほうを選んだんだ



それがまさかそこがこの男の病院だったなんて……



陽生が言う「俺達は一度会った事ある」って言うあの言葉の意味はこういうことだったんだろうか?


もしそうなら、私は一年前にも陽生に一度診察されていたことになる


『前に私があんたに会ったのってあの病院ってこと?』


私はベッドの端に座って私を見ている陽生に向かって口を開く


『ふっ、正解』


すぐさま陽生は笑顔で答えを返したくれた



やっぱり


そういう事だったのか……



でも、なんか腑に落ちない


『あんた良く私の事覚えてたね』