甘い体温


鈍い音と共に私は母に手を思いきり振り払われた


『…ママ?』


『触らないでよ果歩!あんたの風邪が移るでしょ!…ったく』


母は苛立ちながら、私を見下ろす



『ママ…』



なんで…



『あ〜も〜!久しぶりに帰って来たかと思えばこのありさま、こんな事なら帰ってくんじゃなかった』


なんでそんなに怒ってるの?


なんでそんな目で私を見るの?



『何よその目は…ちっ!めんどくさいなぁ…ほら』



そう言われて私の手に渡されたのは市販の風邪薬


『それ飲んでさっさと寝なさい。ったく…あんまり私に迷惑掛けないでよね』


『…はぃ、ごめんなさぃ…』



私は小さくうつむいた


母はそんな私を見てまた、ため息を吐くと再び玄関の方へと歩き出した


『ママ?』


母の気配がとうざかるのを感じた私は、慌てて顔を上げた


母の後ろ姿を見たとたん、何とも言えない寂しさが一気に私の中にこみ上げた


また、どこかに行っちゃうの?


私が風邪ひいたから?


そう思った私は勢いよく母の元へ駆け寄った



『ごめんなさい!ごめんなさい、ママ!!

もう果歩何も言わないから…我がまま言わないから…

頭痛いのも我慢する!いい子にするからだから…』



お願いだから



『だからもうお外行かないで!お家にいて!!』



私を置いてかないで……