甘い体温



『ちょっとあなた!』



私の態度に不振に思った看護婦が、私に歩み寄って来ようとして、すかさず陽生がそれを阻止した


『酒井さんいいから、大丈夫だから』


『え、でも…』


『この子、俺の知り合いだから、ちょっと今反抗期なんだよね…』


そう言うと、再び陽生は私の肩に手をかけた




…は?


何だって?


今なんつった?




『大丈夫か?』


陽生は看護婦の行動を制止させると、背中を擦りながら再び私の顔を覗きこんでくる


『誰が…反抗期だって…』


そんな陽生を思いっきり睨みつけた


だけど陽生は少し苦笑いを浮かべつつも、余裕の表情で


『ほら三月ちゃん、とりあえずこっちに移動するよ』


何事も無かったように私を抱きかかえると、強引に私を椅子まで移動させた


『ちょっ!』


陽生を振り払いたいのに、さっき怒鳴ったせいか、さらに体のだるさが増して思うように力が入らない


『だいぶ熱いな…』


椅子に座らせた後、陽生は私の首に両手を当てると、ボソッと呟いた


『辛いだろ?』


そんな陽生に視線を向けようとしたその時だった



あ、れ?



何故だか、目の前の陽生の姿がぼやけて見える


それに体が燃えるように熱い



も、う…やだ…



この前といい、今日といいなんで私ばっかりこんな目に


厄日もいいとこだ…


もう、何も考えられない


てゆーか考えたくない


ん?…やけに目の前が暗くな……




『三月!?』




陽生の慌てた声を微かに聞いたのを最後に、私の意識はぷっつりと遠のいでいった