甘い体温



そう、私の目の前には今この世で一番会いたくない男


椎名陽生が私に笑いかけていた


私は今病院の診察室の中で


この前とはがらりと雰囲気がちがい、メガネをかけ


首に聴診器をぶら下げ、白衣を身に着けた陽生の姿


この姿を見ればこの男が何者かは一目瞭然




『あんた…医者だったの?』




私の問いかけにまったく動じる事無く、笑顔を向けつづける陽生とは反対に


動揺を隠せない私


開いた口が塞がらないとはこのことだろうか?


さすがの私もこの状況には戸惑いを隠せない


でもその瞬間、この前陽生に言われた言葉を思い出した




「前に一度だけ俺と三月は会ってるんだよ」




ああ


そういうことか


熱で頭が朦朧としながらも、私は必死に思考を働かせた


この前、陽生に言われた事をやっと理解した


こんなことって


こんなオチってあり?



もう


まじ



ありえないんですけど…