甘い体温


『そんな自分勝手な考え通るとでも思ってんの?』


私はさらに鋭く陽生を睨んだ


無意識に握り締めた手に、力が入る



『所詮あんたはお金に物を言わせて私を縛りつけたいだけなんでしょ!?

まじ…最低だね』



何でも金で思い通りになると思ったら大間違いなんだよ



これだから金持ちはキライ――…



『…最低…ね…、別にそう思いたければ、思えばいいよ…

だけど俺は、金の力で三月を縛り付けようなんて思ってない

ただ純粋に三月と少しでも一緒に居たいだけだ

そのために少しだけお金を使う、それだけのことだよ

それに、三月もその方が都合がいいんじゃない?

何もしなくても、此処に来ればいつでもご飯が食べれるんだから

悪い条件じゃないと思うけど?』



そう言うと私に笑顔を向ける陽生


『……』


『それに俺はもう決めたから、三月が来ても来なくても、俺は今日からずっと此処に居る
お前が此処に来るの待ってるから…』


『え?』


そう言った陽生の顔は何の迷いも無いすっきりとしたもので


『だから俺に会いたくなったらいつでも此処においで
てゆーか、来いよ』


『……』


不覚にも私は何故かその笑顔に何も言えなくなってしまった




だって



あまりにも、陽生のその表情が優しくて



何故か温かいものに満ち溢れていた気がしたから……