『…えっ』
『ここで一緒に暮らそう』
陽生はもう一度私の耳元で囁くと、私を抱きしめる腕に力を込める
そんな陽生の言葉に、私の思考回路は完全にストップしてしまい
『なぁ果歩、そうしよう』
『……』
もう、ただただ目を丸くするしかできなかった
『お前が隣にいないと、何も張り合いがもてねーんだよ』
『……』
『さっきも言ったろ?お前が隣にいてくれねーと安心して寝れやしねぇって』
『……』
『…それに…寂しがりや同士、一緒に暮らすのも悪くないんじゃねぇ?』
そう言って陽生は不意に体を離すと、私の顔を覗き込んだ
『…ん?』
『…はる……』
そんな陽生に、私の声にならない声がこぼれる
思うように声が出せなくて、空気をうまく吸えないせいか、息苦しさが増していく
…それでも……
『…いい…の…?』
震える声をなんとか出しながら、私は陽生にゆっくりと視線を合わせた
『今更だけど私…もうよく分かってるとは思うけど…料理とかあんまり上手くできないよ…』
『ふっ、本当今更だな…そんなの気にするな、料理なら今まで通り俺が作るし』
『で、でも、私まだ学生だし…何にも出来ないし…陽生に迷惑とか、沢山かけちゃうかもしれないし…』
『何だよそれ、お前らしくもない……果歩にかけられる迷惑なら、喜んで受け止めてやる』
『で、でもでも私寝相悪いし、その、すぐ怒るし…その…だからっ……』
いったい、自分が何を言いたいのか
もう自分で何を言ってるのか、分からない
頭の中がパニック状態になり、言葉が上手くまとまらない
『だ、だからね…私……』
それでも止まらない、私の口
だって、一緒に暮らそうだなんて
きっといままでのホテル暮らしの時とは、また訳が違う
こんな展開になるなんて、これっぽっちも予想してなかったんだもん



