甘い体温


『ねぇ…陽生……』


私は顔を歪ませたまま、陽生の次の言葉を待った


そんな私を少し目を見開きながら見ている陽生


お互い無言の空気に、ドクンと緊張がはしる




『…果歩…』


だけどそんな空気を打ち砕くように、陽生は見開いた目を元に戻すと、また何も無かったかのように、柔らかな表情を浮かべた



『何そんな変な心配してんだよ…』



陽生はポツリ口を開くと



『何だよさっきまではボストンに行くって言ったらあんなに怒ってたくせに…
やめるって分かった途端、今度は行けってか?』



「天の邪鬼なやつだな…」陽生は意地悪く笑い、私のおでこを指でピンっと弾いた



『だ、だって…』


『だってじゃねーよ、せっかくこの先もずっと一緒にいれるっていうのに、果歩、お前は嬉しくないのかよ…俺はこんなに嬉しいのに』



陽生は「なあ?」とさらに顔を近づけ、私の瞳をじっと見つめてくる



そ、そんなの



『う、嬉しいに決まってるじゃない!当たり前でしょ?でもだけど…だって…陽生が……』



私の為に無理とかするのは、やなんだもん


そう思うと、嬉しいけど、素直に喜べないんだよ…