甘い体温


『で、でも本当にそれでよかったの?』


『え?』



勢いよく顔を上げた私に、今度は陽生が少し驚いた声を上げた



『だって陽生今、ずっとボストンのこと迷ってたって…
前々から向こうで働きたいって…そう思ってたんでしょ?

…なのに何で、急にやめるだなんて…』




そうだよ


せっかくのチャンスなのに


陽生にとって今よりもっと勉強できるいいチャンスなんでしょ?


それなのに、どうして?



『…はる…き?』



急にまた私の心がザワザワと疼きだす


私の頭の中で、一つの、考えたくない理由が急速に駆け巡る


それって、やっぱり


うぬぼれかもしれないけど、やっぱりそれって……



『私のせい?』



私がいるからなの…?



陽生の瞳を真っ直ぐ見つめながら、私は顔を歪めた


だって陽生の性格からして…それしか考えられないだもん



『もし、そうなら私…』



そんなのやだよ…


陽生のせっかくのチャンスを私が潰してるみたいで



『そんなの喜べないよ』