甘い体温


『あっちで働けるってことは、今よりもっと俺自信勉強にもなるし、それに元々俺もあっちでいずれは働きたいっていう気持ちはあったからな…』



陽生は少し苦笑いを浮かべると目を細め、こめかみから私の髪をそっとすくい上げた


『でも、ようやく気持ちに整理がついたんだ…』


陽生は何かを決意したように、また私に視線を戻すと、少し沈黙した



『明日、向こうに言って正式に断って来ようと思ってる』


『えっ?』


『直接天本先生に会って、謝ってくるつもりだ』



陽生はそう言うと、私の頬を撫でながら優しく微笑みかけた


その瞳は何の迷いも無く、むしろしっかりとしたもので、陽生の決心が私にも鮮明に伝わってくるほどだった



『…陽生……』



その瞬間、私の体は張り詰めていたものが一気に溢れ出し、何故か放心状態になってしまった



『…っ…良かったっ……』



極度の安心感からか、再び私の瞳からは涙が零れ落ちる


そんな私に気づいた陽生が、フッと笑いながら私の頬に流れる涙を親指ですくい取る



『だ〜から人の話はちゃんと最後まで聞けって言ったろ?ったく、す〜ぐ果歩ちゃんは早とちりするんだから』



陽生の呆れた声に



『…ぅ…ごめんなさぃ…』



私はもう恥ずかしくて、俯きながら小さく頷くしかできなかった


一体私はどんだけ学習能力がないのよ……



もう自分で自分に呆れてものが言えないよ……




だけど…


あれ?ちょっと待って


またハッと我に返った私は、再び顔を上げた