甘い体温



それなのにどうして――…



明日からボストンに行くだなんて


しかも、そんな急に……



『陽生のばか!!』


『え?』



再び私の瞳からは、涙が溢れ出す


酷いよ、せっかく、もうずっと一緒にいれると思ったのに


そんな気にさせておいて


こんなのってない!



『陽生の嘘つき!』



私はたまらず、陽生の手を振り払った


『は?……果歩??』


『ひどいよ…酷いよ陽生……』


私は力なくそう呟くと、ついには我慢できず両手で顔を覆った


私のすすり泣く声が部屋に響き渡る…



『ちょ、ちょっと待て果歩!お前、なんか勘違いしてないか!?』



突然泣き出した私に、陽生は焦ったように困惑ぎみの声を上げる


私の肩を掴み、少しかがんで顔を覗き込む



『…ぅ…何が勘違いなのよ…』



そんな陽生に、私は手で顔を覆ったまま呟く


つい今、陽生の口から明日からボストンに行くって言ったばかりじゃない!


はっきりそう言ったくせに


それなのに、何が勘違いなのよ!



『…っ…ばか陽生……』



私はもう一度涙混じりに呟くと“う…”と喉を鳴らした



『はぁ〜…ったく、またこのパタ〜ンか……』



そんな私を見かねたのか、何故か嘆きに近い溜息を発した陽生



『本当に…しょうがねえーなぁ〜果歩は…でも、まぁ、この前みたくいなくなられるよりは、ましか……』



そう言ってフッとふっ切ったように笑った陽生が、突然私の背中に腕を回し、ぎゅっと優しく私を抱き寄せた