甘い体温


『私の形見って…』


それじゃあまるで私が死んだみたいじゃない


陽生の言葉に納得がいかず、私は思わずしかめっ面を向けた


そりゃね、勝手に姿を消した私が悪いんだけどさ…


でも形見って…



『まあ、そんなに拗ねるなって、結果的には果歩もちゃんと帰って来たわけだし、全て元通りだろ?』



笑いながら陽生は不満そうな私の頭を、あやすようにポンっと叩いて、靴を脱ぎ始めた



『つーか感動の再会はそこまでにして、俺そろそろ中に入りたいんだけど

ずっとこんな所にいると、寒い』



そう言うと陽生は私にも靴を脱ぐように促し



「ほら、とりあえず上がるぞ」と、私を部屋の中へと誘導した






『その辺に適当に座ってて』



リビングに移動するとすぐ、陽生はそう私に言い残し、奥の部屋に姿を消してしまった


そんな陽生の後ろ姿を眺めながら、一人取り残された私はブラウンを抱き抱えたまま、なんとなくぽつんとその場に立ちつくす


すぐ目の前には、淡いグレーの大きくて重厚な皮のソファーと大理石のローテーブル


そして壁には、一体何インチあるのか


とにかくどでかい、プラズマテレビ


部屋全体は落ち着いていて、すごく感じが…いい…んだけど……



『……』



てゆうか何、この部屋?


広すぎでしょ?


見た感じ、奥にもまだ何箇所か部屋があるみたいだし


置かれてる家具といい、デザインといい


結局ここも、一流ホテルの一室みたい