甘い体温


見つめた先には、私が大好きな見慣れた茶色い1匹


ブラウンが嬉しそうに尻尾を振って、こっちまで走って来る


その光景を目にした途端、自然とほころんだ私の顔



『ブラウン!』



私はその場にしゃがむと、両手を伸ばしてブランウンを抱きとめた


久しぶりに感じるブラウンの、綺麗で柔らかな毛並みが頬に当たってくすぐったくて、嬉しくて


私はぎゅっと力っぱいブラウンを抱きすくめた



『会いたかった…』



ずっと会いたかった


本当のことを言うと、会えない間、心配でたまらなかった


時々、夢にまで見てたくらい


私の体の一部が欠けてしまったような、もう、なくてはならないブラウンの存在


今回のことで、改めてブラウンの大切さに気づかされた



『急に居なくなってごめんね…』



本当にごめん…


私の顔をぺろぺろ舐めるブラウンの頭を、謝りながら何度も撫でた



『まったくだよ…もう待ちくたびれたよなぁ?ブラ』



そんな私達の光景を見ていた陽生が、笑いながら隣で意地悪く言う


それに答えるかのように、ワン、と返すブラウン



『ずっと陽生が面倒見てくれてたの?』



私はしゃがみながら陽生の方へ顔を上げた



『当たり前だろ?誰かさんは急に行方不明になっちゃうし、俺以外誰が面倒見るっていうんだよ…』



そう言うと陽生は呆れたように私を見つめる



『う……ごめん…』



そんな陽生の言葉に私は苦笑いを浮かべるしかできなくて…



『まぁ…でも、最悪ブラのことは果歩の形見としてこのまま俺が面倒みてもいいかなって思ってはいたんだけどな』


『へ?形見?』


『そ、果歩の代わりにな』



意地悪く口の端を上げた陽生が、私の頭をクシャっと撫でた