甘い体温


『そっか…』


『そう言うこと』



「理解できた?」と顔を覗き込む陽生に、私はこくんと頷いた



でも、じゃあもうあのホテルには帰れないんだ…


そうなんだ…


そう思うと、理解はできたけど


この日が来るって分かってはいたけどなんか、名残惜しいっていうのかな


今まで散々ホテルに帰るのを避けてたのに、いざもう行けなくなるんだと思ったら、あの部屋が急に恋しく感じる


無性に寂しさが込み上げてくるのは、何でだろう?



って、そんなの当たり前か



何だかんだ言ってあの部屋には、陽生との思い出がいっぱい詰まってたから…


生まれて初めて、愛しいと思える人と過ごした場所


たった2ヶ月の短い間だったけれど、私にはたぶん一生忘れられない濃密な2ヶ月だった


この2ヶ月間がなかったら私、きっとこんなに今、穏やかな気持ちになれてない



救われたんだ



陽生と過ごした、この、短いけどかけがいのない2ヶ月間に…





『そんな顔するなよ…』



思わず俯きかけた私に気付いたのか、突然陽生が私の肩を抱き寄せた