甘い体温




『…え?…仮の婚約者!?』



あまりに予想外な言葉に私は目を大きく見開いた


思わず乱れた服を直そうとしていた手が止まる



『ごめん、もう一度分かりやすいように言ってほしいんだけど…?』



私のその声に、隣で同じくネクタイを締め直そうとしていた陽生の手も止まった



『ん?あ〜だからな…』



陽生は濁したように言うと気まずそうにスッと最後までネクタイを締め直した




開け放たれたカーテン


さっきの薄暗い雰囲気から一変して


私たちがいるこのカウンセリング室には、気持ちがいいほど太陽の光が降り注いでいる


そんな中で、私は明るく鮮明に瞳に映る陽生の横顔を真っ直ぐ見つめた





つまりはこうだ


陽生いわく


この前私が会った婚約者だという沙織さんは、陽生がまだ研修医だったころ良く面倒を見て指導してくれていた先生であり恩師の、娘さん


その沙織さんのお父さんは、陽生が研修医の頃から彼のことをすごく気に入ってくれていて


陽生なら、と


是非にと、一人娘の沙織さんを貰ってくれないかと持ちかけてきたのが、事の始まりらしい


それが、ちょうど私と出会う半年ぐらい前の話


正直、結婚願望なんてなかった陽生は、その話しをすぐに断ったみたいだけど


それでもどうしてもと


1度だけでもいいから会ってくれないかと頼み込まれ、陽生もお世話になってる手前無理に断りきれず、半ば強引に進められたお見合いをしたらしい


そこで初めて沙織さんと出会い、直接本人に断ろうとしたらしいんだけど…


でもそこで陽生より先に断ってきたのは沙織さんの方だったらしい



「私には他に好きな人がいるからあなたとは結婚できません」って…



だけど、「でも…」と沙織さんの言葉には続きがあって



その後聞かされたその内容が問題だった