甘い体温


陽生は頬に零れる私の涙を無言のまま目で追うと、少し目を細め、俯こうとした私の顔を、すくい上げるように手で触れた


『顔色悪いな……』


そう言って、涙いっぱいの私の目元を、そっとぬぐう陽生


その手が、少し震えてるのに気づく


『なんて顔してんだよ…』


『えっ』


陽生はぽつりと言葉を吐き出すと、私の頭を引き寄せ、自分の胸に押し当てた


『ちゃんと食ってるのか?』


『えっ?』


『いったい今まで何やって…』


『はる……』


驚いて顔を上げようとする私を阻止するかのように、もう片方の手で、陽生は私の体をすかさずグッと抱き寄せた


『あんま心配させんな…』


陽生の腕が私の体を強く抱きすくめる


『もう、会えないかと思っ……』


その腕の力強さに、体中が心臓になってしまったかのように、ドクドクと私の中で音を立てる


たったこれだけのことなのに


陽生に触れられた嬉しさで、心が満ち溢れ


体中いっぱい温かいものに満たされていく…


陽生があまりに優しく、力強く私を包むから


私の瞳からは、さらに涙が溢れ出した



『…陽生……』



私は自由になった両手を陽生の背中に回し、白衣をぎゅっと握り締めた


陽生の体温をもっと感じたくて、さらに陽生の胸に顔を埋めていく




ああ…やっぱり、この腕がたまらなく好き


この温もりが心地よくて


唯一私が安心出来る居場所なの


もう好きで好きで


どうしようもない