甘い体温



陽生の病院に着いた時には、午前中の診療が終わったところ


この前もいた受付嬢の伊藤さんが、ちょうど入口のドアを閉めようとしている所だった


そんな伊藤さんを目にしながら


それでも私は、構わず入口の方へ迷うことなく駆け寄り



『陽生いる?』



伊藤さんに勢いよく声をかけた


その私の声に気づいた伊藤さんが顔を上げ、驚いた顔を私に向ける


『え?……あ、この前の…』


少しビックリした声を出した


けれど私はそんな反応を気にすることなく、もう一度鋭く詰め寄った


『陽生いる?』


『え…あ、はい、椎名先生なら第一診察室の方にまだいらっしゃる思いますけど…
そんなに慌ててどうかした……』


『そ、第一診察室ね、ありがと』


私は伊藤さんの言葉を最後まで聞かず、また病院の中へと駆けだした


『…あ…え?ちょっと…!?』


そんな伊藤さんの慌てた言葉は、もう私の耳には届かなかった






中に入ると、病院の中はまだ明るくて


私はそのまま待合室を通り過ぎると、少し狭い通路に入った


そして上にかけられている「第一診察室」のプレートを見つけると、その扉の前で立ち止まった


プレートを見つめながら私は


走ってきたせいで荒くなった息を整えるようにゆっくり吐くと、扉の前で胸を押さえた


目の前のドアの中からは微かに明かりが漏れ、話し声が聞こえる


それに比例して、私の心臓はあり得ないほどの早さで、ドクドクと波打つ


こんなことしたって胸のドキドキは収まらないって、分かりながらも


私は瞳を閉じると、少し大きめに息を吸って、大きく吐く


そして迷うことなく、目の前の扉を開けた