せっかく止まったと思った私の感情がまた


一気に私の瞳から溢れだした



『ほんと…寒すぎ……』



こんなの反則だよ……



ネックレスを掌でギュッと握りしめながら



私は震える唇をその手の甲で押さえ、我慢することなく涙を流した



もう気持ちがいっぱいで


何も言葉に出来なくて



人間は心の中が愛で満たされると何も言えなくなるんだと



私は今それを身をもって知った


陽生が私に与えてくれた愛は


私が求めてたものなんかよりずっと比べ物にならないぐらい大きくて、深くて


温かすぎて目眩がするよ…





『直輝…私…』


『行けよ』



直輝は私の言葉を遮るように言った



『こんなとこでピーピー泣いてるぐらいなら
さっさとあいつの所に行って来い』


『なお…』


『お前の気持ち全部ぶつけてこい……て

何で俺がお前に後押ししなきゃいけねーんだよ』



そう言いながらも直輝の手が私の涙を拭うから私の涙腺はもう修復不可能になってしまった



今更だけど



『直輝がこんなにお人好しな奴だとは思わなかった』


『あ?』



私は涙を流しながら直輝に笑みを浮かべた



『お前…いい度胸してんじゃねーか』



「また押し倒されてーのか」と私に直輝は心底不機嫌な顔を返し



『でもありがと』



そんな直輝に私は精一杯の言葉を返した



『…ま、せいぜい頑張れよ』



私から目を逸らし少しぶっきらぼうに向けられた言葉だったけど、直輝の優しさがすごく嬉しかった




いつも気づくと隣には直輝が居た


直輝が居てくれたおかげで救われたことが沢山あった

こんな私をいつも気にかけてくれて


思ってくれて


直輝には感謝しても足りないぐらいだよ




『直輝』


『あ?』




“ありがとう”




最後部屋を出る瞬間、もう一度私は直輝に笑顔を向けた