甘い体温


『椎名つったっけ?
桜町にある病院の通称イケメンドクター』


――…えっ


思わずガタッっと手に持っていたカップを倒しそうになった


『そいつが原因なんだろ?お前にそんな顔させてるのは…』


「違うか?」と投げかけられた言葉と共に私は右斜め横のベッドに座る直輝の方へ顔を向けた


その瞬間直輝と視線が真っ直ぐ絡まり合いゴクッと息を呑む


『…なんで…』


『…やっぱりそうか』


私の表情ですべてを悟ったのか、直輝は納得したように言葉を吐いた


まさか直輝の口から陽生の名前が出てくるなんて夢にも思ってなかった私は



『……陽生のこと…知ってたの?』



瞬きを忘れるぐらい見開いた瞳で直輝の顔を見つめ返した


『…ああ…俺も何度かあいつの病院かかったことあるしな…それに…
少し前、お前がそいつと一緒に居るとこ偶然見かけちまったからさ…』


その言葉にはっとした


そして少し前の直輝との電話のやり取りを思い出した


この前直輝が電話の時少し様子がおかしかったのはこのせいか


直輝は気づいてたんだ…


私と陽生のこと


知ってたから、だから直輝はあの時……


『それにあいつこの辺じゃあ有名人らしいじゃん』


「知らない奴のが少ねぇんじゃねえの?」と直輝は私から視線を逸らし思いっきり煙を吐いた


そして手元にあった灰皿に煙草を押し付け少しの間の後


再び私の方へと視線を向けた


『…本気じゃないよな?』

『…えっ』


『三月…お前まさか…そいつのこと本気じゃないよな?』


突然直輝の顔が鋭く変わり


私達の周りの空気がピリッと張り詰めたものに変化したのを感じとった