甘い体温



『ほら』


『…ありがと』



私は目の前のテーブルに置かれたコーヒーカップを見つめながら呟いた


中身は私の好きな牛乳たっぷりのホッとカフェオレ


昔から直輝の家に行くと必ず私に作って出してくれるもの


私はカップから視線をずらすと不意に部屋を見渡した



見渡すとそこは…



相変わらず黒とグレーを基調とした無駄な物が一切無いさっぱりとした直輝らしい雰囲気の部屋



そう言えば此処に来るのいつぐらいぶりだろ?


2年になってからは一度も来たことなかったなような…?


とにかくすごく久しぶりのような気がする…



そんなことを思いながら私はカップを手に取ると冷たくなった体に流し込むように一口飲んだ




私は今、何故か直輝の家に居る




家っていっても直輝も一人暮らしだから1LDKのアパートなんだけど


あの後私は直輝に強制的に引っ張られて此処に連れてこられた


正直そんな直輝に戸惑いを隠せなかったけど、



この部屋に入った瞬間



不意に感じた懐かしいこの空間に、


久しぶりの直輝のカフェオレに少しだけ気持ちが和らぐのを感じていた




『少しは落ち着いたか?』


『え?』



カチッとライターの音と同時に私は直輝の方へ顔を上げた


するとさっきのぶっきら棒の雰囲気が嘘のような穏やかな顔つきの直輝と目が合った




『多少はましな顔になったか』


『えっ』


『お前はすぐに顔に出るからな』



「分かりやすいんだよ」と言いいながら直輝は煙草に火を付けた



『…なおき…』



ひょっとして私のこと心配して此処に連れて来てくれたの?



それに気づいた私はそんな直樹をただぼーっと見つめ返した



『ん?なんだよ…』



そんな私に気づいて首を傾ける直輝に私は視線をカップに戻すと



”何でもないない”の意味を込めて軽く顔を横に振った