甘い体温



『三月?』



えっ?



だけどその時、突然聞こえた声に、無意識に携帯の電源を入れようとしていた手が動きを止めた



『お前、こんなとこで突っ立って何やってんの?』



聞き慣れたその声に、私は思わず我に返り、後ろを振り向いた


『…直輝…』


そこには直輝と、直樹の腕に絡みつくようにして立ってる見知らぬ年上の女がいて

直輝は私の顔を見たとたん、何故か眉間に皺を寄せた


『お前…何でそんなこの世の終りみたいな顔してんだよ…』


『…え?』


直樹のその言葉に、私は少しだけ目を大きく開いた


『ちっ…生気ない顔しやがって…』


『なお…』


『ちょっと、直輝この子だぁ〜れ?』



女は私の声を遮ると、直輝の方を見てから私の方へと視線を向けた


少し睨みを効かせながら…


だけど次の瞬間


直輝はあっさりと、女の絡まる腕を引き離した



『お前もういいや、帰れ』


『え?』



突然ホテル街に響いた直輝の低い声


『え、ちょっと直輝!?』


『今から俺、こいつに用があるから』


『えっ?』


そう言うと、直輝は驚く女を無視して、何故か私の方へ歩み寄って来くる


そんな直輝の行動に、私もまた目を丸くするしかなくて…



『ちょっと、直樹どういうことよ!』


『あ?別にやることやったんだから別にいいだろ?』


『は?なによそれ、あんた私のことバカにしてんの!?』


『あ〜してるよ、だからもう帰ってくんない?目障りなんだけど』


『な!!』



今度は女の怒りに満ちた声が、ホテル街に響き渡った