男はそう言うと、おかしくてたまらないといった顔で、クッと喉を鳴らした
その無邪気な笑い顔が、一瞬だけ陽生の笑った顔とダブって見えて
私の中に、とてつもない切なさが込み上げてくるのを感じた
まるで心臓が抉られるような痛みに、思わず片手で胸を押さえた
ああそうか
この男、雰囲気が何となく陽生と似てるんだ…
それに気付いた私は、弱々しく息を吐くと、少しだけ目を伏せた
『でもまあ…それでもまた三月がまた俺に会いたいって言うんなら、俺は身代わりでも大歓迎だぜ、俺、そう言うの気にならない程寛大な心の持ち主だし
それに三月の為なら喜んでこの身を捧げるけど?』
『は?まさか…アホらし…あんたはただやれれば誰でもいいだけでしょ?
悪いけど、もうあんたとは会わないから』
『あっそ、んじゃあお幸せに〜』
『あ?何よそれ』
『俺からのお別れの挨拶』
『バッカじゃないの』
『お、それよく言われる』
それを最後に会話は途切れ、少しの間お互い無言で見つめ合っていたけれど、
男は何事もなかったように、私からその視線をそらした
そしてまるで今までの出来事が嘘のように静まりかえった部屋を、私は何も考えることなく後にした
ホテルから出てすぐの所で、不意に私は足を止めた
正確には動けなくなったと言った方が正しいのかもしれない
…バカは私の方だ
私はカバンから、ずっと電源を落としたままの携帯を取り出すと、思わずぎゅっと握りしめた
ふつふつと、惨めな気持ちだけが押し寄せてくる
最近、まともに眠ってない
ていうより眠れない
一人が怖くて
寂しくて
孤独でどうしようもなくて
前まであんなに平気だったはずなのに
陽生が隣にいないことがどうしようもなく寂しくて、苦しくて…
こんなはずじゃないのに
大丈夫なはずなのに
陽生なんかいなくても私は一人でも大丈夫なはずなのに
なのに
どうして……



