甘い体温


それからの私は毎日が抜け殻のようだった


何をしてても楽しくないし


何を食べてもおいしくない


何も思えないし


何も感じない


まるでモノクロの世界


ただ1日が無気力に、意味もなく過ぎて行くだけ


そんな感じだった…












『もうお前、帰んの?』



後ろから寝起きの擦れた声が聞こえきたと思ったら、シャツのボタンを留めようとしていた左手を不意に捕まえられた



『なぁ…三月…』


『もう朝だから…』



私は後ろから抱きしめてくる男に顔も向けず、そっけなく呟いた


その瞬間、男が動いた衝撃でベッドがギシッと音をたてた



『朝っつっても、まだ5時なんですけど?』


『でも朝だけど?』


『…そりゃそうだけど…』


『私学校あるから…』


『こんな朝早くから行くのか?』


『悪い?』



私はさっきよりも冷めた声で言うと、巻きついている男の手を冷たく引き離した


けれどそんな私の手を、すかさず男が捕み取った



『それでもまだ俺はお前といたい…』


『居てどーすんの?』


『決まってんだろセックス』


『……1人でやってれば?』



そんな、かみ合わない会話の中で、煙草の匂いが私の体を包見込む



『…なぁ三月』


『何?』



男は灰皿に置いてあった吸いかけの煙草を片手で器用に潰すと、その手も私の手に添えた



『俺と付き合って?』


『無理』


『即答かよ』


『あんた他にも女いるでしょ?』


『ああいるぜ、星の数ほど…』


『問題外』


『……』




私は心底うんざりした顔を向けると、今度こそ男の手を振り払い、ベッドから立ち上がった


そんな私を見ながら、少しの沈黙の後、男は何故か可笑しそうにクッと笑いだした