裏門に向かう途中
陽生がいる正門の方になるべく視線を向けないよう、下を向いて歩いた
それでも一瞬
ほんの一瞬だけだったけれど、陽生の姿が遠目に映り
その瞬間、思わず足が止まりそうになった
一週間ぶりに見る陽生に
目頭が熱くなり、鼻の奥がつーんとなった
自分から避けてるのに、陽生の傍に行きたい衝動に駆られて苦しくなった
…だけど……
その思いを必死に振り払って、私は陽生に背を向けるようにして歩きだした
後藤の言う通り
今会わないと、今よりもっと後悔することになるのかもしれない
もう、取り返しがつかなくなるのかもしれない
でも
例え今会ったとして…どうなるの?
どうせ陽生はここから…私の傍からいなくなるんでしょ?
あの婚約者と、ボストンに行くんでしょ?
だったら
どうせいなくなるんなら
今のうちに離れた方がいいじゃない
このまま会わないほうがいいに決まってる
一緒にいる時間が長い分だけ、離れる時が辛くなる
きっと今よりもっと、辛くなる
そんな思いはしたくない
それに、正直少し怖い
陽生に会うのが怖い
また、この前みたいに自分が壊れてしまいそうで
陽生を傷つける言葉を放ってしまうんじゃないかって
そんな気がして
怖いんだ
だから……



