甘い体温



『もうこんな関係終わりにしよう』



――この先だってずっと一人で生きていく


その瞬間、冷たい風が私と陽生の間に一気に吹き抜けた


まるで今の私と陽生の関係をさらに冷たくするように…


陽生の目が大きく開かれて、私を鮮明に映しだした



『…今、何て…』


『ん?だからもう終わりにしようって…

ちょうどいい機会じゃない、もうすぐ約束の期限も終わる訳だし、

今日、この場でちゃんとはっきりさせよう

私もちゃんと返事しなきゃと思ってたから、ちょうどよかったよ

どのみちこのまま曖昧な関係を続けるのも無理な話しだしね』


『……』


『それに、陽生もその方が都合いいんじゃない?

私なんかといたら、おちおち結婚の準備もしてらんないでしょ?

陽生の為にもそうした方がいいに決まってるんだから…

ね、そうしよう』




恋人ごっこはもう終わり



それに、陽生は私なんかといちゃダメだよ


陽生には、私なんかよりもっと大人で、しっかりしてて


ちゃんと陽生のことを信じてくれる人の傍にいた方が絶対幸せに決まってるんだから


だから私なんかといたらダメなの



『じゃあそう言う事で、ホテルも今日中に私出てくから…
今まで何だかんだあったけど、ありがとね…

一応陽生にはこれでも感謝してるんだ…
だから最後にちゃんとお礼だけは言っておくわ』



ほんの一瞬だけだったけれど、人の温かさが知れたことに感謝してる


それを教えてくれた陽生に感謝してるから


もうそれだけで十分だよ


私は少し顔を崩すと今の自分なりの笑顔を向けた




これでいい


最後ぐらいは笑わなきゃ


だから



『じゃあね』



私は最後にそう一言告げると陽生に背を向けた


その瞬間、一気に堪えてた苦しさがまた体中に押し寄せてくる




それでも


これでいい


これでいいの……