甘い体温


『だったら何で…』


無意識に私の口から小さく弱々しくこぼれる言葉


気づいたら、不意に瞳から生温かい雫がこぼれ、頬を濡らしていた




もう頭の中はぐちゃぐちゃで


何が何だか分からない


何が本当で、何が嘘なのか


私にはもうさっぱり理解することが出来ない



『…っ……』



もう、やだ


何で私がこんな…


こんな気持ちにならなきゃいけないの?


何でこんなに心の中を掻き乱されなきゃいけないの?


やっと、心落ち着ける場所を見つけたと思ってたのに


こんな私でもやっと、自分以外の誰かを信じる事できるかもしれないって、


そう思えたところだったのに…



やっと…私…



それなのに



…やだよ



もう気持ちを乱されるのはやだよ…


もう、苦しんだり、傷つくのは嫌なの



……やなの!



結局


私は
誰の事も信じられないのかもしれない


そんなやり切れない思いに


思わず握られている手に力が入る


俯きながら、溢れる涙を必死でこらえようと、唇を強く噛み締めた






『も…やめる』


『え…』



私は掴まれていた手を振りほどくと伏せていた顔をゆっくり上げた



『もうこんな恋人ごっこなんてやめる』




そうだよ


最初っからやっぱり私には無理だったんだよ


人と深く係わることなんて


親からも愛されなかった私が、他人に愛されるなんて到底無理な話しだったんだ


人を信じきれない私が誰かから愛して貰おうなんて、そんな都合のいい話なんかないんだよ


人の温もりなんか、私には似合わないし


そんなもの、なくていい


所詮私には一人があってるんだよ


私みたいな人間が愛なんか求めちゃいけないんだよ


今までだってずっとそうして生きてきたんだから


そうやって一人で歩いて来たんだから




だから私は……