甘い体温


『…何が誤解なのよ』


私は顔を歪ませながら、陽生に低い声を浴びせた



『あの会話から…どこをどうしたら誤解だって言いきれんのよ!』



あんなにはっきりと婚約者だって言ってたくせに


あれが誤解じゃなかったら、一体何だって言うのよ!


『いや…だからあれはな…そうじゃないんだ…
何て説明したらいいのか…彼女とは別に…』


『何でもないとでも言いたいの?』


『え?』


『彼女とは何でもないってそう言いたい訳?』


『……ああ、彼女とは何でもない…
ただちょっと、仕事上お世話になってるだけだ』


『……』




…お世話になってるだけ?



陽生のその言葉に、さらに私の顔が歪むのが分かった


またふつふつと、体の奥底から何か熱いものが込み上げてくる


仕事上お世話になってるだけって…



『…何よそれ…』


『え?』



私は掴まれていた手を、思いっきり振りほどいた



『呆れた……陽生がこんなくだらない言い訳じみたこと言う奴だなんて思わなかった…』



一体、何をどこまでお世話されてんだか…


分かったもんじゃない



『そんなんで私が納得できると思うの?ふざけないでよ!
納得できるわけないでしょ!もっとまともな言い訳ぐらいしなさいよ!』



そんなよくあるありきたりな言い訳聞かされて、はいそうですかって素直に納得できるわけがない



『バカにするのも、いい加減にしてよ!』