甘い体温


私は掴まれた腕を振り解こうと、力いっぱい抵抗した


…だけど……



『ちょっと待てって!』


陽生の手が、それを許してくれなかった



『何で逃げんだよ!』


『…やだっ!放して!』


『おい、果歩!』


『嫌っ!』


『いいからちょっと、こっち向け!』


『!!』



その言葉と同時に腕をグイっと引っ張られ、引き寄せられた


その瞬間、ふわっと私の体を消毒の匂いが包み込む



『少し落ち着けって…』



陽生の手が私の体を抱きよせ、背中をあやすように撫でる


その行動にまた、胸がぎゅっと締め付けられた


あんなに居心地が良かった腕が、今は嫌なほど私に不安にさせる


『…っ……』


私はそれを振り払って、慌てて陽生の胸を押し返した



『やめて…放して!』



私は陽生から無理矢理体を離すと、すかさず睨みつけた


あんな話し聞かされて、落ち着ける訳がないじゃない


思わず、押し返した手に力がこもる


するとその手を、陽生の手が迷わず上から握り締めた




『…お前何か誤解してる…』


手に力を入れながら、真っ直ぐ私に視線を向けてくる陽生


けれどその表情はどことなく少し気まずそうで…


次の言葉をどう切り出そうかと、珍しく言葉を詰まらせている感じだった



『……』


そんな煮え切らない陽生の態度に、思わず私の顔が歪んだ