甘い体温


―――いま何て?


あまりの衝撃に、手からスルリと封筒が落ちた


力無く伏せていた目を、今度は大きく見開く



――…ボストン?



その言葉に、鈍器で強く殴られたような強い痛みが頭にはしり


思わず体がよろめき、足がもつれて、ドアに倒れるように寄りかかった


その衝撃で”ガタッ”と大きな物音が響き、ドアが開く


だけど今の私にはそんな音も聞こえないぐらい、自分の心臓の音だけしか聞こえてこない


体全部が心臓になったみたいに、ドクドク震える



婚約者、ボストン



その言葉が頭の中をぐるぐるかき乱す



陽生…ボストンに行くの?


日本からいなくなるの?


何で……



もう、何がなんだかわけが分からない


私の頭では理解できる範囲を超え過ぎてる


……陽生が私の傍から、いなくなる?


その言葉が、私の中にグサッと突き刺さる


陽生まで私を置いてどこかに行っちゃうの―――?



―――そうなの?



その瞬間、私の中から今まで感じた事のない感情が沸々と湧き出てくるのを感じた



じゃあ、今までの事は一体何だったの?


今まで私に向けられて来た言葉や気持ちは、何?


全部…嘘だったっていうの?


私を好きだと言ってくれたことも、抱きしめてくれたあの温かさも、全部嘘だったの?



何もかも嘘―――…。







『…果歩!』


そんな私の思考を遮るような突然陽生の声に、思わずビクッと体が強張った