甘い体温


そう思った瞬間、ズキンと心が疼いた

だけど、それでも……


私は必死でその思いを掻き消そうと、思わず手をぎゅっと握りしめた


昨日会ってたからって…だから何?


だからといって、別に私を裏切ってるって訳じゃないじゃない


陽生の言う通り、ただ本当に仕事の話をしてたのかも知れないし


私の考え過ぎなのかもしれない


それに婚約者だって言われたけど、何かちょっと違和感がある


本当に何となくだけど、心なしか、2人の会話が他人行儀の様に改まって見えるのは、私の気のせい?


普通婚約者だったら、もっと親密そうに話してもいいと思うんだけど?


だけど何故か、そんな風に感じない


どこかよそよそしいような、そんな感じに思えてしまう


それこそ婚約者って、ひょっとしたら看護婦の何かの間違いかも知れない


ただ、私がそう思いたいだけかもしれないけど……




ううん


そう思いたい


だって


考えられないんだもん


どう考えても陽生が私に嘘付いてるだなんて、思えない


私を騙してるだなんて、信じられない


あんなに優しく抱きしめてくれる陽生の腕は嘘じゃないんだって信じたい―――



信じたい


それなのに……



『昨日は無理に遅くまで付き合わせちゃって悪かったな、先生にも謝っておいてくれないか?』


『ふふ、何ですか陽生さん、そんなに改まった言い方して…
婚約者なんだから、そんなこと気にしないでください』



その声に


その思いはいとも簡単に弾き飛ばされてしまった