甘い体温


『はい、妹さんです』


そう言うと受付嬢もまた、私の方へ振り返った


2人に見つめられ何となく気まずくなる私


少しの間ショートカットの女性は何か考えるように私を見ていたけれど



『そ、なら問題ないわね』



そう言うと納得したのか、私に笑みを向けた



『そう言うことなら、私はお先に帰らせて貰うわ、伊藤さん後はよろしくね』



そして受付嬢にそう挨拶すると、私にも軽くお辞儀をしてショートカットの女性私の横を通り過ぎ、帰って行った



『それじゃあ私達も行きましょうか』



その後、再び受付嬢にそくされた私は、少し胸の突っかかりを覚えながらもまた歩き出した


すると、前にいたはずの受付嬢が、何を思ったのか私の隣に歩み寄ってきて…



『それにしても沙織さんって、本当に綺麗ですよね〜』


『は?』



突然話しかけられて、思わず身構える私


けれどそんな私にお構いなしに、受付嬢は言葉を続けてくる



『私、ああいうかっこいい女性って憧れなんです』


『…はぁ…?』



急にそんなこと私に振られても、何て応えたらいいのか分からない状況で


完全に私を陽生の妹だと思い込んでる受付嬢に、なんとなく苦笑いを浮かべそうになったその時――…




『さすが椎名先生の婚約者だけありますよね〜』





耳を疑うような言葉が、私の脳を突き刺した




『えっ?』


『本当に素敵な婚約者です』






――婚約者?