甘い体温


あ…と瞬きをした時には、待合室の中から人影が現われて、こっちのドアの方へ向かってきた



……陽生?



と、一瞬脳裏に浮かんだけれど、その人影は小柄で丸みを帯びていて、どう見ても男の人ではないことに気づく


その人影に思わず一歩後ろに後ずさりをしたその時、自動ドアの”ウィ―ン”とという音と共に扉が開かれた



『ごめんなさいね、今日の診療はもう終了してしまったんですけど』



そう申し訳なさそうに顔を出したのは、20代前半ぐらいの髪の毛を頭の後ろで一つに束ねた、目がくりっとした可愛らしい人だった


見た感じ、たぶん受付嬢って言ったところだろうか?


白のナース服に、その上から淡いピンクのカーディガンを羽織ったその女性は、驚いた私に少し困った笑みを向けた


当たり前だけど、どうやら私を患者かなにかかと勘違いしてる様子



『あの…』


『……』



そんな状況に私はどうしたもんかと言葉に詰まらせ、投げ掛けられた言葉にも反応せずに

、無言で受付嬢を見つめていたら



『ひょっとして緊急の事態ですか?』


『え?』


『もし緊急な状態ならすぐに先生を呼んで……』



何を血迷ったのか


突然真剣な面持ちになって、今にも駆けだそうとする受付嬢を私は慌てて引きとめた



『え…あ、ちょっと!!』


『え?』



どこをどう見たら、この私が緊急事態に見えるんだろうか?


受付嬢の慌てっぷりに思わず苦笑いを浮かべながら


私は逆に、冷静になっていく自分を感じた




『診察じゃなくて…あの、はる…でもなくて

椎名先生に頼まれた物を持って来ただけなんですけど?』


『え?椎名先生…?』